Story
合格者のストーリー
「SDGsばっかりやっても自分飽きるなって思った。」
岡山由來さんが高1の秋に探究テーマを考えた時、真っ先に頭に浮かんだのがその言葉だった。周りがSDGsや環境問題を選ぶ中で、岡山さんは別の方向に頭を向けた。「自分らしいユニークな部分は何かな」と問い続けながら部屋の引き出しを開けたら、トランプが出てきた。その瞬間から、ポーカー×認知症予防という誰もやっていない探究テーマが始まった。
トビタテ留学ジャパンでイギリスに5週間滞在し、ロンドンのデイサービス施設でポーカーを使ったボランティアを実施。AIG高校生プログラムでは全国20人という数十倍の競争を突破し、アメリカのバージニア大学で生活しながらIMF・世界銀行のレクチャーを受けた。しかし高3の8月後半になっても、まだ志望校が決まっていなかった。塾なし・半年未満という準備で国際教養大学(AIU)の総合型選抜と学校推薦型選抜の両方に出願したが、総合型選抜は不合格という結果だった。そこから学校推薦型選抜で合格を掴んだ。入学後は180人中上位11人の最上位英語クラスに選抜されている。「周りに流されるタイプなので、物理的に遊びに行けない環境をあえて選んだ」——この正直な言葉の意味が、今のAIU生活を証明している。
「引き出しのトランプ」から生まれた研究テーマ—ポーカー×認知症予防という独自の発想



岡山由來さんが探究活動を始めたのは高校1年生の秋だった。名城大学附属高等学校の国際コースには探究活動に熱心な先生が在籍し、外部講師を積極的に招聘する環境があった。その先生との出会いが、岡山さんを動かした。しかし最初にぶつかった壁は「何をテーマにするか」だった。SDGsや環境問題を選ぶ同級生が多い中で、岡山さんには「自分がSDGsで飽きる」という直感があった。芸術、音楽、絵画、読書——自分の好きなもの一つひとつを見つめながら「自分らしいユニークな部分は何か」を問い続けた。
そしてある日、部屋の引き出しを開けたらトランプが出てきた。ポーカーは確率計算・数学的思考・相手の表情を読む認知機能の複合的な訓練だ。これを認知症予防に応用できないか——「自分の好きなものを使って何かやりたい」という発想が、誰にも真似できないテーマを生み出した。テーマが見つかった瞬間、岡山さんの中で何かが決まった感覚があったという。自分だけが入れる扉を見つけた感覚、とでも言えばいいだろうか。「選択肢は狭めたくないので、今のうちにやれることをどんどんやっていこう」という行動原理が、そこから加速していった。誰も選ばなかったテーマを選んだことが、後の書類全体の独自性の根拠になっていく。
トビタテ留学ジャパン・イギリス5週間—現地デイサービスで確信を得た


高校2年生の夏、飛び立て留学ジャパンでロンドンへの5週間留学が実現した。この留学が単なる英語研修にならなかったのは、岡山さんの事前行動によるものだ。現地で日本人ハーフの管理職の方に直接メールでアポイントを取り、ロンドンのデイサービス施設でのボランティアを自分の手で実現させた。施設では認知症の方々とポーカーを活用した活動を実践し、日本とイギリスの認知症対策制度を比較するという学術的な視野まで開いた。参加者の表情が変わる瞬間、介護スタッフとの議論、制度の違いが生み出すサービスの差——高校1年の秋に引き出しから見つけたトランプが、ロンドンの現場で「研究」として機能した瞬間だった。「帰りたくないみたいな、ずっと言っていた」——この充実感は、テーマと現場が一致した時にしか生まれない種類のものだった。
AIG高校生プログラム全国20人選抜—アメリカ×IMF×世界銀行講義
高校3年生の夏、全国から20人という倍率数十倍のAIG高校生プログラムに選抜された。バージニア大学のキャンパスで生活し、ワシントンDCでIMFと世界銀行のレクチャーを受け、平和に関する国際対話プログラムに参加した2週間は、岡山さんの視野をもう一段階広げた。「国際機関で働きたい」という将来ビジョンが、漠然とした憧れから具体的なイメージへと変わったのがこの2週間だった。
しかしこの高3夏の留学は、受験という現実とのせめぎ合いでもあった。事前準備に数ヶ月を要するこのプログラムが、受験対策の時間を確実に削っていった。「今行くべきか」という葛藤が頭をよぎった。それでも「自分の興味・関心があることをずっと突き進んでやっているのでモチベーションは下がらない」という信念が、行く選択を後押しした。高校時代には起業活動も2事業(小学生向けポーカー教育スクールの企画、AIを使ったファッション広告事業)を経験している。受験という一点に絞り込まず、自分の関心が向くものへ手を伸ばし続けた高校3年間が、書類の厚みを生み出していた。
「遊びに行けない環境をあえて選んだ」—国際教養大学を選んだ本当の理由

AIU・ICU・APUを比較検討した岡山さんが国際教養大学を選んだ最大の理由は、「ロケーション」だった。秋田という立地で「車がないと外出困難」な環境——これは不便ではなく、意図した選択だ。「周りに流されるタイプなので、物理的に遊びに行けない環境をあえて選んだ」という言葉は、自分の弱点を正確に把握した上での、逆転の論理だ。全授業英語・全寮制・学生の20〜25%が留学生・24時間開館の図書館・義務の1年間海外留学・国公立の学費という条件が重なり、「ここにしよう」という確信が固まった。「4年間ぐらいはここにいようという決意」という言葉に、その選択への腹の括り方が滲んでいる。自分の弱点を知り、それを環境で補う——この自己認識の深さが、後の面接で志望動機の最も強い軸になった。
総合型選抜不合格から学校推薦型で逆転—半年未満の全対策
高3の8月後半〜9月にAIU志望を決めたのは、周囲と比べても非常に遅いタイミングだった。「時間がないっていう状況がすごく嫌だった」——この言葉に、当時の切迫感がそのまま宿っている。英語エッセイ(300ワード以上)・自己推薦書・自己アピール書・日英混合面接という総合型選抜の対策と、学校推薦型選抜の対策を同時並行で進めた。共通テストの準備も不十分なままという3正面作戦だった。塾は一切使わず、学校の先生のサポートのみで進めた。総合型選抜は英検準1級以上という出願条件をクリアしており、エッセイと面接の対策に集中した。
しかし結果は不合格だった。総合型選抜で落ちたという現実を受け止めながらも、岡山さんはすでに学校推薦型選抜という次の手を用意していた。「総合型の書類をブラッシュアップして学校推薦型に流用する」という実践的な判断が、ここで生きた。学校推薦型選抜の出願条件は英検2級以上+評定4.0以上+校長推薦書——評定4.3×英検準1級という岡山さんの実績がこの条件を余裕でクリアしていた。最初から両方に出願するという戦略の意味は、まさにここにある。総合型が不合格になっても次の入り口が開いていたのは、二重の準備をしていたからだった。
「もう一回やり直せるなら早めから対策したい」—準備期間の正直な後悔
「もっと早く準備していればっていうのは本当に正直思う」——この言葉は、岡山さんが後輩に送れる最も正直なメッセージだ。オープンキャンパスに一度も参加しなかったこと、高3夏のアメリカ留学と受験準備の両立に苦労したこと、共通テストへの備えが不十分だったこと——後悔のリストは具体的だ。「もう一回受験をやり直せるなら高3の夏前から準備したい」という言葉に嘘はない。結果として合格したが、その合格がギリギリだったことは岡山さん自身がよく分かっている。時間的な余裕を持って準備すること——これが岡山さんの体験から後輩への最も実践的なアドバイスだ。
出願条件の違いが合格を分けた—総合型と学校推薦型の攻略ポイント
国際教養大学の総合型選抜は英検準1級以上という出願条件がある一方、学校推薦型選抜は英検2級以上+評定4.0以上+校長推薦書という条件だ。この条件の違いを正確に把握して両方に出願したことが、総合型不合格後も学校推薦型で合格できた構造的な理由だった。英検準1級×評定4.3という岡山さんのスペックは、最初から両方の入り口に対応できる実績だった。どちらか一方しか出願していなければ、この逆転は生まれなかった。二重出願という戦略は、単なる保険ではなく、自分の実績を最大限に活用するための合理的な判断だった。
国際教養大学が評価した3つのポイント—探究×留学×自己認識

岡山さんの合格を分析すると、評価されたポイントは3つに整理できる。
第一は、独自の探究テーマと現地実践の融合だ。「SDGsで飽きる」という自己認識から始まり、引き出しのトランプから研究テーマを発見するという転換が、書類の独自性を生み出した。それをトビタテ留学でロンドンのデイサービス施設という現場で実践したという事実が、「理論と実践の両方ができる人物」という証明になった。日本人ハーフの管理職に直接メールでアポイントを取るという積極性も、書類の説得力を高める具体的な行動の証拠として機能した。
第二は、AIG全国20人選抜という客観的な選抜実績だ。競争率数十倍のプログラムに選ばれたという事実は、「複数のプロセスで選ばれ続ける人物」という評価につながる。IMFや世界銀行のレクチャーという内容の充実度も、「国際機関で働きたい」という志望動機の本気度を裏付ける具体的な材料として機能した。
第三は、「遊びに行けない環境をあえて選ぶ」という深い自己認識だ。自分の弱点を正直に把握し、それを克服するための環境選択をする論理が、AIUの面接で「自分を深く知っている人物」として評価された。志望動機の根拠が表面的なキャンパスの特色ではなく、「自分のタイプに合っているから」という内的な自己理解に基づいていたことが、面接官の心に届いた理由だと思われる。
「自分の興味があることをずっと突き進んでいるからモチベーションは下がらない」
「チャレンジ・ビヨンド・マイリミット(限界を超える)」というAIUの理念と、「ずっと突き進む」という岡山さんの行動原理は同じ方向を向いていた。高1の引き出しのトランプから始まり、ロンドンのデイサービス、ワシントンDCのIMF講義、総合型不合格後の即座の切り替えという一連の流れは、「止まらない人物」という一貫したメッセージを書類全体に刻んでいた。SDGsを選ばなかったという哲学が、最終的に最も強い個性として機能した。自分の興味に正直であることが、受験という場においても最大の武器になることを、岡山さんの合格は証明している。
入学後180人中11位の英語最上位クラスへ—AIUの全英語生活が始まった
2024年4月、秋田の全寮制の大学生活が始まった。入学直後の英語プレースメントテストで、岡山さんは180人中上位11人の最上位英語クラスに選抜された。「英語になると不安になる」という素直な気持ちを持ちながらも、イギリス・アメリカでの留学経験で培った実戦の英語力が、テストという形で数字になって表れた。国際寮では日本人と外国人が混在し、日本語と英語を使い分けながら生活している。食堂での韓国人留学生との会話、ルームメイトとの出会い、「だんだん顔見知りが増えてきた」という日常——「遊びに行けない環境をあえて選んだ」という判断は、入学から数日で正解だったと感じ始めている。
2〜3年次にはドイツの「認知症村」制度を研究するための留学を計画し、AI関連の起業活動も継続している。「自分たちが歴史の一歩になっていく実感が湧く」——2023年にリニューアルされた新しい寮で、引き出しのトランプから始まったポーカー×認知症予防の研究が、AIUという全英語の舞台でさらに深まっていく。止まらないその歩みは、「チャレンジ・ビヨンド・マイリミット」という言葉の通りだ。
受験生・保護者へ|「自分らしいテーマ」と「早めの準備」が合格への近道



岡山由來さんが総合型選抜・学校推薦型選抜を目指す後輩たちへ贈るメッセージは、3つのポイントに集約できる。
まず、「SDGsで飽きる」という正直な感覚を大切にすること。一般的なテーマを選べば書類が埋まるかもしれないが、面接の場で熱量を持って語れるかどうかは別の話だ。自分が本当に関心を持てるテーマは、引き出しのトランプのように意外な場所に転がっている。「自分の好きなものを使って何かやりたい」という発想から探究を始めることが、書類の独自性と面接の説得力を同時に生み出す。誰かが選んだテーマではなく、自分だけが入れる扉を探すことが、総合型選抜における最初の一歩だ。
次に、実績は「選ばれた経験」の積み重ねで作ること。AIG高校生プログラムへの選抜、トビタテ留学ジャパンへの採択——これらは申し込んだだけで手に入るものではない。審査や選考を経て「選ばれた」という事実が、書類の客観的な説得力になる。コンテストでも留学プログラムでも、応募すること自体に意義がある。「自分には無理かもしれない」という思いがあったとしても、まず一歩を踏み出してみることが積み重ねの始まりだ。
そして最も重要なのが、志望校決定と準備を早めること。「もっと早く準備していれば」という岡山さんの言葉は、合格した人間だからこそ言える実感だ。オープンキャンパスへの参加、志望校の入試制度の把握、探究テーマと連動した活動の設計——これらはいずれも時間がかかる。高3の夏前には全体像が見えている状態を作ることが、余裕を持った対策につながる。
保護者の方へ。総合型選抜・学校推薦型選抜は、子どもが「自分は何に関心があるのか」「なぜその大学でなければならないのか」を徹底的に問われる入試だ。その問いに正直に向き合う時間と環境を、家庭として作ってあげることが、何より大きなサポートになる。岡山さんが「自分の興味を突き進んでいい」と感じられた背景には、放任でも干渉でもない、子どもの選択を見守る家庭環境があった。
「自分の興味・関心があることをずっと突き進んでやっているのでモチベーションは下がらない」——岡山さんのこの言葉が示すように、総合型選抜は自分の関心に正直でいることが最大の強みになる入試だ。引き出しのトランプから始まった研究テーマが、国際教養大学の最上位英語クラスという現実につながった。その道筋は、誰かの真似ではなく、自分だけのものだったからこそ力を持った。
