
まさか受かると思ってなくて
11月頭の物理の授業中、大上絵梨果さんはポータルサイトで慶應義塾大学SFC環境情報学部の合格通知を確認した。「うわー」と言いそうになったが、授業中だったので我慢した。授業が終わると、すぐに先生に感謝を伝えに行った。
大上さんのプロフィールを並べると、慶應SFC合格とは結びつかない数字が目に入る。評定平均3.3点台。グローバルリーダーズコースという英語教育に特化したコースで、成績を取ることが困難な環境だった。総合型選抜の存在を知ったのは高校3年生の4月。「評定が低いため絶対に無理だなって思う」と一度は諦め、夏になってから急遽出願を決意した「ドタバタ」の短期決戦だった。
しかしその3.3という評定の裏側には、朝4時起床から夜10時半まで続くシンクロナイズドスケーティングの練習があった。国際大会・世界選手権への出場があった。シニアチームのトライアウトに不合格となり研修生として練習に参加し続けた挫折の日々があった。そしてその挫折の最中に、海外のトップ選手との対話から「チームフロー」という研究テーマが生まれていた。
この記事では、2つの逆転を同時に成し遂げた大上さんの高校3年間を丁寧に追う。スポーツと学問を一本の軸でつないだとき、評定3.3は障壁ではなく、物語の一部になる。
この記事でわかること
- 評定3.3・朝4時起床・世界選手権出場という条件で大妻中野高校から慶應SFC総合型選抜に合格するまでのリアルなストーリー
- シンクロナイズドスケーティングのトライアウト不合格という挫折体験から「チームフロー」という探究テーマが生まれた具体的なプロセス
- 夏から専門塾なしで志望理由書2000字を完成させ、書類審査を通過した短期間の受験対策の全記録
- 評定が低くてもスポーツ実績と研究テーマの独自性で慶應SFC総合型選抜を突破できた3つの合格要因の分析
こんな人におすすめ
- 慶應SFC環境情報学部の総合型選抜を目指している高校生・保護者
- 部活・スポーツに打ち込んでいて評定が低く、総合型選抜で難関大学を目指したい受験生
- スポーツ経験や挫折体験を探究テーマ・志望理由書に活かす方法を知りたい受験生
- 高3の夏から総合型選抜の準備を始めることが現実的かどうか実例で確かめたい受験生と保護者
合格のポイント
挫折体験を探究テーマの原点にした
トライアウト不合格という挫折と国際大会での海外選手との対話が重なり、「チームフロー」という研究テーマが生まれた。自分のスポーツ経験と学術的問いを一本の軸でつないだことが書類の説得力を生んだ。
希少競技の継続実績と研究テーマを直結させた
シンクロナイズドスケーティングという希少競技での国際大会・世界選手権出場という実績が、スポーツ心理学研究への動機の必然性を証明した。「なぜSFCでなければならないか」が明確に語れた。
短期間でも学校の先生を最大限に活用した
専門塾なし・夏スタートという条件でも、朝出して昼に返却してくれる即日添削サポートを活用して志望理由書の質を高めた。周囲の環境を使い切る姿勢が短期間での完成度を支えた。
ー合格者プロフィールー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | 大上 絵梨果 |
| 氏名(ひらがな) | おおうえ えりか |
| 合格大学・学部 | 慶應義塾大学 環境情報学部(SFC) |
| 入試方式 | 総合型選抜(AO入試) |
| 出身高校 | 大妻中野高等学校(私立・中高一貫・女子校) |
| 出身校の文理区分 | 理系 |
| 部活 | フィギュアスケート部(シンクロナイズドスケーティング) |
| 総合型選抜開始時期 | 受験日から半年未満(高校3年生夏) |
| 併願 | 総合型選抜のみ(慶應SFC一本) |
| 塾 | 利用 |
| 英検取得状況 | 準1級 |
| 主な活動 | シンクロナイズドスケーティング(国際大会出場・世界選手権出場・シニアチーム正式メンバー)・朝4時起床での朝練・夜10時半までの夜練継続 |
| 受験対策 | 志望理由書2000字(学校の先生による即日添削)・面接練習(圧迫面接を重点実施)・チームフロー研究テーマの構築 |
| 現在の状況 | 慶應義塾大学フィギュアスケート部所属・スポーツ研究継続・3級取得(全日本インカレ出場資格)・プレシルバー・アイスダンス資格保持 |
朝4時起床・移動3時間・評定3.3
――シンクロ選手として生きた大妻中野高校の3年間



大妻中野高等学校のグローバルリーダーズコース。英語教育に特化したそのコースで、大上さんの高校生活は始まった。小学2年生から中学1年生まで5年間をアメリカで過ごし、現地校に通って培った英語力は、帰国後も英語の本や英語のYouTube、TEDトークを視聴することで磨き続けてきた。英語は強みのはずだった。しかしグローバルリーダーズコースの英語レベルは高く、成績を取ることは想像以上に困難だった。
それに加えて、大上さんの一日はシンクロナイズドスケーティングを中心に回っていた。朝4時に起床し、朝練でリンクへ向かう。学校に行き、授業を受け、塾に通い、また夜の練習へ。「朝4時に起きて、練習に取り組んでから学校に行って」という言葉が示すように、リンクから学校まで3時間という移動時間すら勉強の場として活用するスマホアプリでの暗記学習に充てていた。夜10時半まで練習が続く日もあった。
このスケジュールの中で評定3.3という数字が生まれたのは、必然だった。数学・物理も並行して勉強しながら、一般受験の準備も続けていた。しかしシンクロナイズドスケーティングへの情熱は揺るがなかった。その競技への愛が、後の総合型選抜挑戦の根幹を支えることになる。
「評定が低いため絶対に無理だなって思う」
――総合型選抜を諦めかけた瞬間
高校3年生の4月頃、大上さんは総合型選抜の存在を知った。しかし最初に浮かんだ感情は希望ではなく、「評定が低いため絶対に無理だなって思う」という諦めだった。「総合型選抜は評定4点以上、5点に近い人が受けるもの」というイメージが先行し、自分には縁がないと判断した。夏になるまで、その判断は変わらなかった。一般受験の準備を続けながら、スケートも続けながら、それでも「もしかしたら」という可能性の扉は閉じたままだった。その扉を再び開いたのは、夏の急遽の決意だった。
シニアトライアウト不合格・研修生の日々
――挫折がチームフロー研究を生んだ原点



高校2年生の後半、大上さんの高校生活に最大の試練が訪れた。シニアレベルのチームトライアウトへの挑戦。しかし結果は不合格だった。「一番最初の不合格をもらったとき」の挫折感は、それまで積み上げてきた自信を根こそぎ揺るがすものだった。研修生として練習には参加できるが、大きな試合には出られない。世界選手権も、国際大会も、チームメイトが出場する舞台を外から見つめる日々が続いた。
しかしこの同じ時期に、もう一つの出来事が起きていた。初めて出場した国際大会での、海外のトップ選手との対話だ。その選手は「チームとのシナジーを感じてやってるよ」と言った。その一言が、大上さんの頭の中に残り続けた。「シナジーって何だろうっていうのにすごい興味を持って」。チームが一体となって動く瞬間の感覚、集中状態の共有、スポーツパフォーマンスとメンタルの関係——それを研究したいという問いが、この対話から生まれた。
挫折と探究テーマの発見が同時期に起きた。研修生として悔しさの中にいながら、「チームフロー」という研究の種が芽生えていた。挫折がなければ、あの国際大会での対話がこれほど深く刺さることはなかったかもしれない。「シンクロという競技がすごい好きだったっていうことを挫折して感じて」という言葉が、この時期の全てを語っている。
「シナジーって何だろう」――国際大会の一言が研究テーマになった瞬間
海外のトップ選手が口にした「シナジー」という言葉への疑問は、大上さんをスポーツ心理学の入口へと引き込んだ。チームフローとは何か。チームが集中状態に入る瞬間はどう生まれるのか。個人の集中とチームの集中はどう関係しているのか。その問いを研究テーマとして育てた経緯が、後の志望理由書の核心になる。「英語はあくまでも手段なので、自分の研究があるところに行った」という言葉が示すように、ICUや上智大学は研究分野が合わなかった。SFCの研究環境との適合性こそが、志望校選択の根拠だった。
練習方法を見直し・自己分析を深め
――研修生から世界選手権正式メンバーへの逆転
トライアウト不合格という現実を受け止めた後、大上さんは崩れなかった。「どうやったらもっとうまくなれるのか、自分が本当に足りないところはどういうところなのかをすごい分析して」。この言葉に、挫折後の向き合い方が凝縮されている。感情的になるのではなく、冷静に自分を分析し、練習方法を見直し、改善を積み重ねていった。
研修生としての期間は、見方を変えれば濃密な自己分析の時間だった。正式メンバーとして試合に出る仲間たちの動きを観察しながら、自分に足りないものを言語化していく。その積み重ねが、高校3年生の10〜11月の地方大会での正式メンバー昇格という結果に結びついた。昇格後は国際大会と世界選手権に正式メンバーとして出場した。トライアウト不合格から世界選手権正式メンバーへ。スポーツでの逆転が、大上さんの人物像に「諦めない精神力」という軸を与えた。
「絶対に諦めないっていう強い意志を持ちながら取り組んで」という言葉は、この時期の経験から生まれている。そしてこの姿勢こそが、夏からの短期間での総合型選抜準備を支えることになる。
夏から始めた慶應SFC総合型選抜の志望理由書・面接対策の全記録


夏。大上さんは決意した。評定3.3という現実を前に一度は諦めていた総合型選抜に、急遽挑戦することを。「ドタバタ」という言葉が示す通り、準備は決して順序立てたものではなかった。しかし動き始めた瞬間から、大上さんは持てる武器を全て使い始めた。
志望理由書は2000字。「全然、めったに書く機会がなかった」という状態からのスタートだった。シンクロナイズドスケーティングでの経験とチームフロー研究への関心、そしてSFCでなければならない理由——これらを一本の線でつなぐ作業は、容易ではなかった。しかし学校の先生が強力なサポートを提供してくれた。添削を依頼すると、朝出せば昼には返ってくる。先生の即日対応のおかげで、短期間での反復改善が可能になった。オープンキャンパスには参加できなかったが、人から話を聞いて情報収集を重ねた。
一次審査の通過は、大上さん自身が最も驚いた結果だった。「まさか通過すると思っていなかった」状態から、急遽面接対策を開始した。学校の先生と一般塾の先生の両方に協力を仰ぎ、圧迫面接の練習を重点的に行った。質問の意図を読む訓練、スポーツ経験と研究計画の語り方、成績について聞かれた際の回答——あらゆる角度からの準備を短期間で積み上げた。「朝出して昼に返却」――学校の先生が即日添削してくれた志望理由書作成の裏側
総合型選抜専門の塾には通わなかった。しかし大妻中野高等学校の先生たちのサポートは手厚かった。「先生方が積極的にアドバイスを提供してくれる」学校の文化が、専門塾の不在を補った。志望理由書を朝提出すれば昼には添削されて戻ってくる。その速度での反復改善が、夏から始めた準備の質を支えた。シンクロの経験とチームフロー研究の接続、SFCとの具体的な研究接続——この二つの軸を先生の添削を重ねながら磨き上げていった過程が、書類審査通過という予想外の結果を生んだ。
トップバッター・20分・和やかな雰囲気
――慶應SFCの面接本番で何が起きたか


面接当日。SFCのアルファ館。大上さんはトップバッターだった。圧迫面接を想定して練習を重ねてきた。緊張の中で面接室に入った。しかし実際の雰囲気は、練習で想定していたものとは異なっていた。圧迫ではなく、和やかだった。教授陣との対話は、穏やかな空気の中で進んでいった。
志望理由について、スポーツ経験について、研究計画について——詳しく質問を受けた。そして成績についても聞かれた。大上さんは正直に、スポーツ活動との両立を説明した。朝4時起床から夜10時半までの練習、3時間の移動時間、その中での学習の工夫——全てを語った。評定3.3という数字の背景に何があるのかを、自分の言葉で伝えた。
面接は20分程度で終わった。予想より短かった。手応えはあった。しかし「まさか受かると思ってなくて」という感覚は残っていた。一般受験の準備を続けながら合格発表を待った。
「まさか受かると思ってなくて」――物理の授業中に合格通知を見た瞬間
11月頭。物理の授業中、大上さんはポータルサイトを開いた。画面に合格の文字が映し出された瞬間、「うわー」という声が出そうになった。授業中だったから、我慢した。気持ちを押し込めたまま授業を終えた後、先生のところへ感謝を伝えに行った。受験は終わった。一般受験は受けなかった。国際試合が共通テストと重なっていたため、スケート活動に専念できた。「まさか受かると思ってなくて」という言葉の重さは、諦めていた入試に夏から飛び込み、短期間で準備し、書類が通過したことすら想定外だったという、大上さんの受験の全体像を一言で表している。
慶應SFCに評価された3つの軸
――評定3.3が倍率を突破した合格要因分析
大上さんの合格を分析すると、慶應SFCが評価したポイントは3つの軸に整理できる。
一つ目は「希少競技の継続実績と具体的な成果」だ。シンクロナイズドスケーティングは、日本国内でも選手人口が少ない希少競技だ。その競技で国際大会・世界選手権に出場し、さらにトライアウト不合格という挫折を経て正式メンバーに昇格したプロセスは、継続力・粘り強さ・自己分析能力を一本の軌跡として示していた。評定3.3という数字は、この競技への献身の証でもあった。
二つ目は「研究テーマの独自性と動機の一貫性」だ。チームフローという研究テーマは、座学から生まれたものではなく、国際大会でのトップ選手との対話という実体験から生まれた。「シナジーって何だろう」という問いは、競技者として感じた本物の疑問だった。この疑問がスポーツ心理学への研究動機に直結し、「なぜSFCでなければならないか」という志望理由の核心を形成した。
三つ目は「5年間のアメリカ生活で培った英語力と国際的な素養」だ。「英語はあくまでも手段なので、自分の研究があるところに行った」という言葉が示すように、英語力は目的ではなくツールだった。しかしその英語力があることで、国際大会での海外選手との対話が可能になり、IELTS取得という客観的な証明もあった。スポーツ・研究・英語という3つの軸が揃ったとき、評定3.3は背景情報の一つに過ぎなくなった。
「悔いなく取り組んでいただきたい」
――大学でスケートを続ける大上さんからのメッセージ

慶應義塾大学SFC環境情報学部に入学した大上さんは、フィギュアスケート部に所属し、シンクロナイズドスケーティングの団体での活動を継続した。当初予定していたチームフロー・集中状態の研究に加え、シンクロナイズドスケーティングの技術面・コーチング面の研究にも幅を広げている。3級を取得し全日本インカレの出場資格を得た。大学でもスケートと学問を両立し続けている。
受験生へのメッセージを、大上さんは迷わず語る。「今一番やりたいことに、一番一生懸命に取り組んでいただきたい」。今取り組んでいること、今一番好きなことを諦めずに続けること。「何かしらの自分の財産になると思うので、今やってる好きなことを熱中していることに、全力を注いで、悔いなく取り組んでいただきたい」。
保護者へのメッセージも明確だ。評定が低いことは、総合型選抜を諦める理由にならない。朝4時起床で競技を続けてきた高校生が、夏からの短期準備で慶應SFCの書類審査を突破した事実がある。大切なのは、子どもが今最も打ち込んでいることの深さと、それを研究テーマへとつなぐ視点だ。「絶対に諦めないっていう強い意志を持ちながら取り組んで」——大上さんのこの言葉は、2つの逆転を経験した人間だからこそ、最大の重みを持って届く。
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塾長
京都大学 経済学部 経済経営学科卒
東大寺学園高等学校卒。
総合型選抜(AO入試)にて京都大学経済学部に現役合格。
高校時代は生徒会長として学校運営に携わる。
知性を競う全国放送のクイズ番組「Qさま!!」出演。
総合型選抜は、単なる「AO 入試」ではなく、あなたの人生経験すべてが評価される、最も公平な入試形式です。逆転合格の扉は、あなたにも開かれています。
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