
「お前、何言ってるのかわからないから、どっか行け」
カナダ・トロントの教室で、そう言われた日のことを堀井爽夏さんは今でも鮮明に覚えている。英語が聞き取れず、グループワークに入れてもらえず、発言するたびに笑われる。勉強嫌いだった高校生が異国の地で経験したのは、まるで映画のような孤立と差別だった。
しかしその挫折が、のちに慶應義塾大学総合政策学部(SFC)の総合型選抜合格を引き寄せる原動力になるとは、当時の堀井さんには想像もできなかっただろう。
郁文館グローバル高等学校出身の堀井さんは、高校2年次に1年間のカナダ留学を経験し、帰国後は学生団体「提言JP」の代表として主権者教育に取り組んだ。全国高校生政策甲子園で全国優勝を果たし、当時の岸田首相への表敬訪問・プレゼンテーションも実現した。しかしその一方で、足立区の公立高校での出前授業で誰一人として話を聞いてもらえなかった「最大の挫折」も経験している。
そして高校3年の夏、慶應SFCの総合型選抜を受験すると決めてから本番まで、準備期間はわずか1ヶ月。1万5,000字書いた志望理由書を2,000字に削り込み、ChatGPTを「批判役」として使い倒した。そんな堀井さんの合格ストーリーを、総合型選抜を目指す高校生・保護者に向けて余すところなく伝える。
本記事は下記の対談動画の内容をもとに、合格要因を解説記事です
━━ この記事でわかること ━━
| この記事でわかること ・足立区出身・郁文館グローバル高等学校から慶應SFC総合型選抜に合格するまでのリアルなストーリー ・カナダ留学での孤立・差別体験と主権者教育を軸にした探究活動・社会活動の作り方 ・1万5,000字を2,000字に削った志望理由書の作成プロセスと、ChatGPTを活用した対策法 ・準備期間1ヶ月で慶應SFC総合型選抜を突破した受験戦略と、面接で評価されたポイント こんな人におすすめ ・慶應SFC(総合政策学部・環境情報学部)の総合型選抜を目指している高校生 ・保護者・留学経験や社会活動を総合型選抜に活かしたいと考えている人 ・探究活動のテーマ設定や志望理由書の書き方に悩んでいる受験生 ・海外大学との併願を考えながら国内総合型選抜も検討している高校生 合格のポイント ▶ 社会課題を軸に活動を積み重ねた 主権者教育という一貫したテーマのもと、政策甲子園全国優勝・NHK会長賞受賞・選挙管理委員会との協働など、探究活動と社会活動を高校3年間で継続した。 ▶ 挫折体験を「現場感」として言語化した 出前授業で誰にも聞いてもらえなかった失敗や、留学での孤立体験を、理想論ではなく現場を知る強みとして志望理由書と面接で活かした。 ▶ 「伸びしろ」を意図的に残した志望理由書を書いた 完璧な人間を演じるのではなく「自分はまだまだ学び足りない」という姿勢を前面に出し、余白のある志望理由書で慶應SFCの教授陣に成長可能性をアピールした。 |
合格者プロフィール
| 氏名 | 堀井 爽夏(ほりい そうか) |
| 出身高校 | 郁文館グローバル高等学校(私立・文系) |
| 合格大学・学部 | 慶應義塾大学 総合政策学部(SFC) |
| 入試方式 | 総合型選抜 |
| 第一志望 | トロント大学 政治学部 |
| 英語資格 | 英検 準1級 / IELTS 6.5 |
| 最終評定平均 | 4.0以上 |
| 部活 | 無(留学時に陸上部へ約1年間在籍) |
| 塾 | (約2ヶ月) |
| 準備期間 | 受験日から半年未満(実質1ヶ月の集中準備) |
| 主な活動 | 学生団体「提言JP」代表 / 全国高校生政策甲子園全国優勝 / NHK会長賞受賞 / カナダ・トロント留学(高校2年) |
足立区・郁文館グローバルという「原点」と主権者教育との出会い
東京都23区の中で、投票率も平均所得もともに最下位(23位)の街、足立区。堀井さんはその地で育ち、公立中学校に通っていた。傍から見れば、決して恵まれた環境とは言えないかもしれない。しかし本人は後に、「環境はむしろ活用するもの」と語っている。その言葉が生まれた背景には、中学3年生のときの忘れられない体験があった。
社会科の先生が授業で企画してくれた「模擬選挙」。足立区の区長選挙を題材に、生徒たちが実際に投票を模擬体験するというものだった。堀井さんはそこで自分の意見を発言したとき、クラスメートが反応してくれた喜びを初めて感じた。「自分の声が、みんなに届いた」という原体験。それが主権者教育への関心の出発点になった。
その後、中学の生徒会や学級委員会で改革活動に取り組みながら、高校は全員留学制度のある郁文館グローバル高等学校へと進学する。3年分のカリキュラムを2年間で履修する詰め込みスケジュール、宿題の量は「えぐい」という表現がぴったりの日々。部活に入る生徒も少なく、河川敷でのランニングや筋トレが唯一の運動だった。そんな環境の中でも、堀井さんはすでに政策甲子園への出場準備を中学時代の仲間と進めていた。
「23区最下位」の街が育てた、政治への問題意識
足立区という地域が、堀井さんの問題意識を形成するうえで大きな役割を果たした。若者の政治参画意識や投票率の低下という社会課題は、どこか遠い話ではなく、自分が育った街そのものの課題として目の前にあった。
「自分が育った場所の現実を知っているというのは、強みになる」と堀井さんは語る。理想論だけを語るのではなく、実際に政治から遠ざかっている人たちの姿を見ている、その経験が総合型選抜の志望理由書でも面接でも、圧倒的なリアリティをもたらすことになる。
主権者教育の必要性を「頭で理解する」のではなく、「体で知っている」高校生。それが後に慶應SFCの教授陣に評価される「現場感」の原点だった。
カナダ留学で経験した孤立・差別と、人生初めての「本気の勉強」


高校2年生になると、郁文館グローバルの全員留学制度によりカナダ・トロントへの1年間の留学が始まった。主権者教育への想いを胸に渡航した堀井さんを待ち受けていたのは、予想をはるかに超える困難だった。
英語が聞き取れない。グループワークに入れてもらえない。何か発言するたびに笑われる。ホストファミリーの食事(アフリカ料理)も口に合わない。「映画みたいな、それぐらいおかしいようなことばっかり」と堀井さんが表現するほどの日々が続いた。アジア人男性として「弱い」と見られ、日常生活のあらゆる場面で壁にぶつかった。
「どっか行け」と言われた高校生が、毎日100単語で逆転した1年
留学早々、水筒のことを英語で伝えようとしたとき、現地の生徒にこう言われた。
「お前、何言ってるのかわからないから、どっか行け」
この一言が、堀井さんの何かを変えた。悔しさ、孤独感、そして「このままでは終われない」という反骨心。英語が苦手で、勉強も嫌いだったはずの高校生がこのとき初めて、机に向かって本気で勉強し始めた。
「その時が人生で初めて机に向かった瞬間で」と堀井さんは振り返る。毎日100単語を暗記し、ホストファミリーとニュースについてディスカッションする日課を設けた。「自分はカナダ人だ」と思い込んで英語漬けの生活に飛び込んだ。徐々に言葉が通じるようになり、少しずつ友人も増えていった。
そして迎えた留学最終日。最初に「どっか行け」と言ってきたその生徒が近づいてきて、こう告げた。「お前がいなくて寂しい」。1年間の成長と変化が、その一言にすべて凝縮されていた。英語が嫌いだった高校生が、留学という逆境の中で本当の学びと成長を手に入れた瞬間だった。
トロント市「若者議会」との出会いが、活動の方向を変えた


留学中、堀井さんはトロント市の公式若者議会のディレクターと対談する機会を得た。日本では想像もしにくい光景だった。若者が政治に正式なかたちで参加できる仕組みが、この街には公式に存在していた。
日本では若者の投票率低下が社会問題として叫ばれ続けているのに、なぜカナダではこれほど若者の政治参画が進んでいるのか。その問いが、帰国後の探究活動と社会活動のテーマを決定的に方向づけた。「若者議会を日本にもつくりたい」という具体的な目標が、留学中に芽生えたのだ。
カナダでの留学経験は、単なる英語力向上や異文化体験にとどまらなかった。差別と孤立を乗り越えた経験、そして若者政治参画という新たな問題意識の獲得。この留学体験がなければ、慶應SFCへの合格もなかっただろう。
帰国後の挫折と、全国高校生政策甲子園での挑戦



カナダから帰国した堀井さんは、留学で得たインスピレーションを形にするべく動き始めた。学生団体「提言JP」の代表として主権者教育の活動を加速させ、選挙管理委員会との協働による出前授業も開始した。高校3年生として走り続ける日々の中で、しかし忘れられない挫折が訪れた。
「誰も聞いていなかった」出前授業が、一番の挫折になった



それは足立区の公立高校での出前授業だった。民主主義の大切さ、投票することの意義、若者が政治に参加することの重要性を熱く語った。しかし教室を見回したとき、堀井さんは言葉を失った。
「誰1人として、その話を聞いてなくて、みんな下を見て、スマホを見て、寝てる」
諦め切った同世代が目の前にいた。政治など自分たちには関係ないと思っている空気がひしひしと伝わってきた。堀井さんはそのとき、ある事実に気づかされた。
「自分が今までやってきたことって、意識の高い人たちが
集まっているっていうものでしかなかったんだな」



政策甲子園も、学生団体も、出前授業も、それまで接してきた相手は「もともと社会に関心のある人たち」だった。本当に届けなければならない相手、政治から距離を置いている同世代の前では、自分の言葉は何一つ響かなかった。これが堀井さんにとって最大の挫折体験だったと言う。
しかしこの挫折こそが、その後の活動姿勢を変えた。「押し付けない」「聞き手の視線に立つ」という哲学は、この日の教室から生まれた。志望理由書でも、面接でも、この挫折体験はリアルな「現場感」として評価されることになる。
政策甲子園全国優勝、そして岸田首相へのプレゼン



出前授業での挫折と並行して、堀井さんは全国高校生政策甲子園への挑戦を続けていた。学校がバラバラな中学時代の仲間たちとチームを組み、放課後に集まれない困難をオンラインで乗り越えながら、模擬選挙の導入推進・デジタル選挙の実施という政策を0から立案した。書類審査を突破し、国会議事堂での演説を経て、全国投票で見事全国優勝を果たした。
さらに国連協会主催の「高校生の主張コンクール」でも東京都大会特賞・全国大会NHK会長賞を受賞。そして当時の総理大臣・岸田首相への表敬訪問・プレゼンテーションを実現した。足立区の公立中学校出身の高校生が、国の最高権力者の前に立って若者の政治参画を語った。
慶應SFC総合型選抜を1ヶ月で突破した受験戦略
高校3年生になった堀井さんの当初の目標は、海外大学への進学だった。トロント大学政治学部を第一志望に、ブリティッシュコロンビア大学・マギル大学・ジョージタウン大学などを検討し、夏まで国内受験は一切考えていなかった。ところが7月終わりに、考えが変わる。
「せっかく今までやってきたことがあるんだったら、どこか出したい」という思いが湧き上がった。活動を通じて知り合った大学生の中に慶應SFCの学生が多く、「皆さん、それぞれが何者かである」という印象を受けていたことも背中を押した。公式オープンキャンパスには行かなかったが、友人に連れられてキャンパスを訪れたとき、一見普通に見えて話すと起業している学生が何人もいた。そういう環境で学びたいという憧れが、受験の決め手になった。
慶應SFC総合型選抜の受験を決断したのは7月末から8月頭。本番まで1ヶ月しかない。「あまり真似するべきではない」と本人も認識するほどの短期集中だった。寝ている時間以外のすべてを準備に充てる日々が始まった。
1万5,000字書いて2,000字に削った、志望理由書の作り方
慶應SFC総合型選抜の志望理由書は2,000文字。しかし堀井さんが最初に書いたのは、その7〜8倍にのぼる1万〜1万5,000文字だった。
「何が本当に自分が言いたいことなのか」を問い続けながら、少しずつ削っていく作業。主権者教育への想い、留学での挫折と成長、出前授業での気づき、政策甲子園での経験、将来の若者議会構想——書きたいことは無数にある。しかしすべてを詰め込んでは、読み手には伝わらない。削ぎ落とすことで、本当に伝えたいことが浮かび上がってくる。
志望理由書で特に工夫したのは「余白を作ること」だったと堀井さんは語る。完璧な人間を演じるのではなく、「自分はまだまだ学び足りないんだ」という姿勢を意図的に前面に出した。慶應SFCが求めるのは完成された人材ではなく、これから伸びる可能性を持った人材だという読みがあった。先行研究の調査を通じて日本の主権者教育の課題を整理し、独自の問いを立てることで、提言内容の独自性も担保した。
この作業でChatGPTを活用したことも特徴的だ。しかしその使い方は「書いてもらう」のではなく、「批判してもらう」というものだった。「僕はこう思うんだけど、これについてどう思う?」と問いかけ、第三者の批判的視点を志望理由書の磨き込みに活用した。AIを道具として使いこなした、令和ならではの総合型選抜対策と言えるだろう。
教授3人×30分の面接で問われたこと
慶應SFC総合型選抜の面接は、教授3人対学生1人という形式で30分間行われる。「具材はあるけど、どう料理するか」という期間として、堀井さんは面接準備を位置づけた。
今までの活動の振り返りが面接の中心になる。留学でなぜ英語が伸びたのか、政策甲子園でどんな提言をしたのか、出前授業の挫折から何を学んだのか、足立区での活動を通じて何を変えたいのか。活動の事実を語るだけでなく、「なぜ」「どう考えたか」という思考のプロセスまで掘り下げられる。日頃の探究活動・社会活動が深く根付いていなければ答えられない質問ばかりだ。
そこで堀井さんが活かせたのが、足立区の出前授業での挫折体験だった。理想論だけでなく、現場の現実を知っている人間の言葉は、教授陣に圧倒的な説得力を持って届いたはずだ。
慶應SFCが評価した「実績」より「現場感」と「伸びしろ」
政策甲子園全国優勝、NHK会長賞、岸田首相への表敬訪問——堀井さんの実績は客観的に見ても圧倒的だ。しかし本人が合格の決め手として挙げるのは、そういった華やかな実績ではなかった。
一つは「現場感」だ。足立区という環境で育ち、政治から遠い同世代の姿を肌で知っていること。出前授業で誰にも聞いてもらえなかった経験を持つこと。カナダ留学で孤立・差別を経験し、それでも乗り越えてきたこと。理想論ではなく、リアルな現場から出発した問題意識と提言は、慶應SFCが評価する「当事者性」と一致していた。
もう一つは「伸びしろ」だ。志望理由書に意図的に「余白」を設けたこと、面接で「自分はまだまだ学び足りない」という姿勢を示したこと。完成された人間ではなく、慶應SFCで学ぶことによって大きく成長できる人材だと示すことが、合格の鍵になった。
総合型選抜は、実績の量を競う試験ではない。「なぜその活動をしたのか」「何を学んだのか」「大学でどう発展させたいのか」という思考の軌跡と成長への意欲が問われる入試だ。堀井さんの合格は、そのことを雄弁に物語っている。
総合型選抜を目指す高校生・保護者へのメッセージ

「辛かった経験が一番成長できると思うので、ぜひ飛んでほしい」と堀井さんは言う。英語が嫌いだった、勉強が苦手だった、という人にこそ留学に挑戦してほしいと。
「環境はむしろ活用するものだと思ってて、
挫折があるからこそ面白いし、高い山ほど登った後が気持ちいい」
足立区という環境を「不利な条件」としてではなく、「現場を知る強み」として活かしたように、どんな環境にも必ず総合型選抜に活かせる要素がある。重要なのは、自分の環境や経験を意味のあるストーリーとして語れるかどうかだ。
堀井さんがもう一つ強調するのは、「日頃の積み重ね」の大切さだ。1ヶ月という短期間で準備できたのは、中学3年生から続けてきた主権者教育への探究活動と社会活動があったからこそ。「これは真似しないでほしい」と本人が言うように、総合型選抜の準備は早いほど有利だ。
「周りのこととか、自分以外のことで諦めないでほしい」という言葉が、堀井さんの高校生活の全てを象徴している。足立区で育ったこと、留学で差別を受けたこと、出前授業で挫折したこと。それらすべてが、慶應SFC合格への道を作った素材だった。あなたの環境も、あなたの挫折も、必ず総合型選抜の武器になる。
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塾長
京都大学 経済学部 経済経営学科卒
東大寺学園高等学校卒。
総合型選抜(AO入試)にて京都大学経済学部に現役合格。
高校時代は生徒会長として学校運営に携わる。
知性を競う全国放送のクイズ番組「Qさま!!」出演。
総合型選抜は、単なる「AO 入試」ではなく、あなたの人生経験すべてが評価される、最も公平な入試形式です。逆転合格の扉は、あなたにも開かれています。
当塾では、堀井さんのような挫折を合格に導く支援してきた実績があります。あなたの経験、成績、志望校を聞かせていただき、総合型選抜での合格可能性を無料で診断するカウンセリングを行っています。
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